2010年12月7日火曜日

インドネシア、脱・喫煙大国へ : 健康ニュース : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)

政府、来月増税…禁煙の宗教令も

 【ジャカルタ=林英彰】喫煙人口の低年齢化が進むインドネシアでたばこの規制を強める動きが加速している。

 首都のジャカルタ特別州が屋内施設などの全面禁煙に乗り出し、政府も規制強化案作りをスタートさせた。

 世界保健機関(WHO)によると、インドネシアの13~15歳の男子喫煙率は41%(2009年)。国によって調査がなかったり、統計年度がまちまちだったりすることから、単純な比較はできないが、東南・南アジアでは最も高いとみられる。5~9歳でたばこを吸い始める割合も01年の0・4%から04年には2・8%に上昇しており、児童擁護団体はその後も増え続けているとみている。

 今年5月には、スマトラ島に住む2歳男児がおもちゃの車に乗りながらたばこをふかす姿がネットに流れ、国内外に衝撃が走った。男児は1日40本も吸い、親は「たばこが切れると暴れる」と容認していたという。

 同国は喫煙の年齢制限を設けておらず、WHOの「たばこ規制枠組み条約」にも未加盟だ。

たばこを売る屋台の脇で一服する客。街中にはこうした屋台やたばこの売り子が多数存在する(ジャカルタで、林英彰撮影)

 こうした事態にファウジ・ボウォ同特別州知事は5月、公共施設やオフィスビルを出入り口も含めて全館禁煙とする知事令を出し、11月から抜き打ち検査を始めた。来年は違反者に営業権取り消しを含む罰則を科す。

 政府でも、保健省がたばこの屋外看板や広告の全面禁止などを盛り込んだ案を作成。これを基に、関係省庁が各省令による規制強化に向けて協議を始めた。たばこ税も来年1月から4~10ポイント引き上げられる。「新規喫煙者を減らす効果はある」(財務省担当者)と期待されている。

 3000万人の会員を抱える国内第2のイスラム団体も「喫煙は宗教で禁じる自殺行為だ」として、禁煙を求める宗教令を出した。

 WHOによると、人口2億3000万人を超えるインドネシアの喫煙率は29%。喫煙人口は「中国、インドに次いで多い」(インドネシア保健省)。

 規制が緩かった背景には巨大なたばこ産業の存在がある。たばこ関連の雇用は約650万人に上り、たばこ税収入(09年約53兆ルピア=約4900億円)は政府歳入の約5%を占める。

 政府内には「規制強化は関連産業で働く貧困者の失業につながる」との慎重意見もあるが、保健省幹部は「健康被害対策の強化が必要との認識では(政府内は)一致している」と語り、早期の政府規制発令に自信を示している。

 たばこ規制枠組み条約 喫煙による健康被害防止のため、たばこの消費削減を目指す。公衆衛生に関する世界初の国際条約。2005年2月に発効。たばこ広告を原則的に禁止することや、たばこの包装の30%以上に健康被害などの警告表示を載せることなどが定められた。今年8月現在の批准国は日本を含む168か国。

(2010年12月7日 読売新聞)

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